ケイバコジョブ ケイバコジョブ トップへ

手続き・備え

軽貨物の配達中の事故・荷物の破損は誰の責任?雇用と業務委託の違い

軽貨物の配達中の事故や荷物の破損は誰の責任になるかを、雇用で働く場合(会社の使用者責任と従業員への請求の制限)と業務委託で請ける場合(運送の約款・保険・フリーランス法)に分けて説明します。事故のときの警察と国への報告もまとめました。

公開 2026.10.20 読了目安 8分

軽貨物の配達中に起きた事故や荷物の破損を誰がどこまで負うかは、雇用で働くか、業務委託(個人事業主として運送の仕事を請ける形)で請けるかで考え方が違います。どちらの場合も、会社か自分のどちらか一方が全部を負うとは限らないので、事故の前に契約と保険を確かめておきます。

雇用で働く場合は、仕事中の事故で相手に与えた損害について会社も責任を負うことがあり、会社が従業員に請求できる範囲は、裁判例で限られることがあります。

業務委託で請ける場合は、運送の事業者として自分が責任を負う場面があり、負担の範囲は主に契約の定めと保険の内容で変わります。

配達中に事故を起こしたら、まず何をする?

e-Gov法令検索(公式サイト)の道路交通法の第72条では、交通事故があったときは、運転者はすぐに運転を止めて負傷者を救護し、道路の危険を防ぐ措置をとることになっています。そのうえで警察官に、事故の日時と場所、死傷者の数とけがの程度、壊れた物、積んでいた荷物などを報告します。

国土交通省(公式サイト)の事故のときの案内によると、警察への報告は義務です。警察に届け出ていない事故には、自賠責保険(法律で加入が義務付けられた自動車の保険)の請求などで使う交通事故証明書(自動車安全運転センターが交付する書面)が出ません。

運送の事業者がする事故の記録と報告

国土交通省(公式サイト)の軽貨物の安全対策のページにある資料によると、2025年4月から、貨物軽自動車運送事業者(軽自動車などで他人の荷物を運び、運賃を受け取る事業者)は、事故の概要・原因・再発防止策を記録して3年間保存することになりました。死者や重傷者が出た事故などは30日以内に運輸支局などを通じて国土交通大臣に報告し、2人以上が亡くなった事故などは24時間以内に速報します(2026年10月時点)。

雇用で働く場合は、勤め先が貨物軽自動車運送事業者であれば、この記録と報告をするのは会社です。軽貨物ドライバーは、事故の内容を会社に伝えます。

業務委託で一人で事業を行う場合は、自分が事業者として記録と報告をします。

雇用で働く場合、相手への賠償は誰が負う?

裁判所(公式サイト)の最高裁判所の判決(2020年2月28日)は、民法第715条の使用者責任について、会社は従業員の働きで利益を上げ、事業を広げて第三者に損害を与える危険を増やしているので、仕事中に従業員が第三者に与えた損害を会社にも負担させるものだとしています。国土交通省の事故のときの案内でも、業務中に従業員が事故を起こせば、運転者だけでなく雇主も賠償責任を負うことがあるとされています。

会社の車両の任意保険(加入が義務でない自動車保険)は会社が契約するもので、どの補償に入っているか、どこまで補償されるかは保険の内容で変わります。保険の種類と、仕事中のけがへの労災保険は軽貨物の事業用の自動車保険と貨物保険で説明しています。

会社から従業員への請求は一般に制限される

厚生労働省(公式サイト)の労働条件のQ&Aによると、会社が従業員の行為で損害を受けたときは賠償を求められる場合がありますが、すべての場合に求められるわけではなく、認められる場合も、信義則(互いに誠実に振る舞うべきという原則)から範囲が限られることがあります。同じQ&Aで紹介されている最高裁判所の判決(1976年7月8日)では、業務でタンクローリーを運転中の事故について、会社が対物賠償責任保険や車両保険に入っていなかったなどの事情から、会社が請求できるのは損害の4分の1までとされました。割合は事故ごとの事情で決まるもので、どの事故にも同じ割合が当てはまるわけではありません。会社の車両の修理代や、荷物の破損で会社が荷主に払った賠償も、会社が受けた損害として、請求の範囲が限られることがあります。

従業員が自分で相手に賠償した場合について、2020年の判決は、会社の事業の性格や規模、事故の予防や損失の分散についての会社の配慮の程度などの事情に照らして、相当と認められる額を会社に求められるとしています。

賠償の額の予定と、給与からの天引き

同じQ&Aによると、違約金や賠償の額を前もって決めておくことは労働基準法第16条で禁じられ、そうした定めは無効です。会社は、実際に損害を受けた場合にその事実を証明して請求できるにとどまり、賠償金を給与から一方的に差し引くことは、賃金の全額払い(第24条)に反するため原則として認められません。

業務委託で請ける場合、荷物の破損や事故は誰が負う?

業務委託で請ける軽貨物ドライバーは、自分が運送の事業者になります。近畿運輸局(公式サイト)が掲載する標準貨物軽自動車運送約款(国土交通省が告示で定めた、運送の条件の取り決めのひな形)では、運送事業者は荷主に対して、荷物を受け取ってから引き渡すまでの滅失(荷物がなくなること)・損傷・遅れについて、注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害を賠償する責任を負うとされています。同じ約款には、天災や荷主側の過失などによる損害は賠償しない定め(第44条)や、賠償の額を荷物の価額で決め、遅れの賠償は運賃などの総額までとする定め(第47条)もあります。

同じ約款では、ほかの事業者の運送を利用して運ぶ場合も、荷主に対する運送上の責任は約款を使う運送会社が負うとされています。運送会社と自分の間で損害をどう分けるかは、業務委託の契約の損害賠償の定めと保険で変わります。

相手の人や車への賠償には、自分の車両の自賠責保険と任意保険で備えます。国土交通省の自賠責保険の案内のとおり、自賠責保険の対象は人身事故の相手への賠償だけで、物の損害は対象外です。

フリーランス法で負担がなくなるわけではない

公正取引委員会・厚生労働省(公式サイト)のフリーランス法の考え方によると、この法律で禁じられる「報酬の減額」は、請けた側に責任が無いのに、決めた報酬を後から減らすことです(従業員を使う発注事業者との1か月以上の取引。2026年10月時点)。請けた側に責任があるとして報酬を減らせるのは限られた場合で、額も客観的に相当と認められる範囲に限られます。

同じ考え方では、仕事を出した側が自分の受けた仕事を再委託するときに、取り決めが無いのに、自分が契約した保険の保険料の一部を報酬から差し引くことも、減額の例に挙げられています。運用は見直されることがあるため、最新は公正取引委員会・厚生労働省の案内で確かめてください。

違約金や事故の負担をめぐるトラブルと相談先は、軽貨物の業務委託でよくあるトラブルと予防策にまとめています。

事故の前に契約と保険で確かめておくこと

働き方に応じて、次の点を先に確かめておきます。

雇用で働く場合

  • 会社の車両の任意保険で、相手の人・物と会社の車両の損害がどこまで補償されるか
  • 就業規則や労働条件通知書に、事故や荷物の破損のときの取り扱いが書かれているか
  • 自分の車を仕事に使う場合、事故のときにどの保険を使うか

当サイトの軽貨物ドライバーの求人一覧には、雇用(正社員・アルバイトなど)の求人だけを掲載しています。車両の扱いなど求人の欄ごとの見方は、軽貨物ドライバーの求人の見方で説明しています。

業務委託で請ける場合

  • 契約の損害賠償の定め(負担の上限、過失の程度による扱い、荷物の価額の決め方)
  • 任意保険や貨物保険(運送中の荷物の損害に備える保険)への加入が条件か、保険料を誰が払うか
  • 修理代や弁償の額を報酬から差し引く定めがあるか

契約書で見る項目の全体は、軽貨物の業務委託契約で確認すべき項目にまとめています。

よくある質問

軽貨物の配達中の事故と荷物の破損について、気になりやすい点に答えます。

雇用で働いていて、会社の車で事故を起こしたら、修理代を給料から引かれますか?

厚生労働省のQ&Aによると、賠償金を給与から一方的に差し引くことは、賃金の全額払いの決まりにより原則として認められません。会社が修理代を請求できる場合も、事情によって範囲が限られることがあります。困ったときは、厚生労働省(公式サイト)の総合労働相談コーナー(労働局や労働基準監督署などにある窓口)で相談できます。

業務委託で運送会社から請けた荷物を壊したら、荷主に直接弁償するのですか?

標準の約款の定めでは、荷主に対して運送上の責任を負うのは、仕事をほかの事業者に任せた場合も、約款を使う運送会社です。そのうえで運送会社と自分の負担の分け方は、業務委託の契約と保険の内容で変わります。責任の無い損害まで報酬から差し引かれる場合は、従業員を使う発注事業者との1か月以上の取引なら、フリーランス法の「報酬の減額」に照らして問題になり得ます。

物が壊れただけの事故でも、警察に届けますか?

道路交通法第72条の報告は、けが人がいない事故も対象です。警察に届け出ていない事故には交通事故証明書が出ないため、保険の請求などで困ることがあります。その場では軽いけがだと思っても、国土交通省の案内のとおり、早めに医師の診断を受けます。

この記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。制度・手続きの内容は変更されることがあります。実際の手続きの前に、必ず所管の官公庁など公式の案内で最新の情報を確認してください。

軽貨物ドライバーの求人を探す

ケイバコジョブでは、軽貨物(黒ナンバー)の募集だけを掲載しています。地域や案件の種類から探せます。

求人一覧を見る

あわせて読みたい